ある金曜の夜、仕事から遅くに帰ったらステキなものが。
和歌山から直送の釜揚げしらす、それもこんなにたくさん。送ってくださった方からは「しらすごはんの時はお米としらすが1:1くらいで」とメッセージをいただきました。なんということでしょう。ありがたいことです。
普段、好きなものはチビチビ消費するたちなのですが、賞味期限は4日後。今回ばかりはそうも言っていられません。言われた通り美味しいうちにどんどんいただくことにしました。
これは世にも贅沢なしらす祭りの記録。
1日目
届いたその日の深夜の夕飯。
この日は既に時間も遅かったので、まずは試食のつもりでフレッシュトマトにそのまましらすをのせて味ポン。
塩がとてもやわらかく、ふわっとして最高に美味しい。いいしらすってこんななのか。本当に甘塩なので、明日からの料理は塩気は考慮せずにたくさん使って旨味を堪能しようと決めました。
美味しい、美味しいとしらすを食べながら飲んでいたらいっぺんに酔いが回った。遠藤酒造場の渓流朝しぼりは度数が高いのをすっかり忘れてた。
2日目
土曜の朝食兼、昼食。しらすのバゲット。
バゲットにオリーブオイルをたっぷり塗り、塩して焼き上げると中心がフォカッチャのような感じになって美味しい。
半熟の目玉焼きとしらすを一緒に食べるとまた格別。これも一種の変則パズーパンと言えなくもない。
しらす三昧の合間に、家族で近所の公園へ。
この春、息子が道端の花を見て「あれ何?」などと訊いてくるようになり、その成長を喜ぶとともに「なんだろうねぇ、綺麗だねぇ」としか返せない自分がいよいよ情けなくなった(子供の頃は虫や植物が好きだったからこそ、余計に悲しい)ので、最近少しずつ身近な植物の同定を練習しています。この日もいろいろ知らない花の名前を覚えて、久しぶりにヘビイチゴや大好きなキュウリグサなども見つけてテンションが上がる。
50mm単焦点じゃせっかくのキュウリグサが撮れない!と嘆いていたらある方から「マクロレンズ買いましょう」と痛いところを突かれたので、いよいよ買うことに決めました。動植物に対する知見が増えれば季節を深く知ることにもなり、ひいては料理の幅も広がるはず。よってこれは浪費でなく投資である。
さて、夜はシンプルにしらすごはんを食べると決めていたので、公園の帰りにスーパーに寄り、一緒に食べたいものを各自カゴに入れたらなんだかすごい量に。
写真ではわかりづらいけど、とにかくてんこ盛りのしらす。こんな贅沢なしらすごはんを食べたことはないので、バチがあたる気がして少しドキドキした。
大根おろしとのコラボも捨てがたい。
しらすおろしをおかずにしらすごはんを食べるという幸せな暴挙。
この日の小葱のぬたをムツさんが絵にしてくださって、ますます幸せになった。
kazhさん(@kazhomely )の作られた小葱のぬた、春の色! pic.twitter.com/4jazYGDQ5P
— ムツ (@62TAnn) 2018年5月13日
お皿に映ったさまざまな光が描かれているのが本当に素敵。無意識に意味付けして見てしまう僕の目には「黒い皿」としか捉えられないのに、その場にある光をそのままつかまえると世界はこんなにも綺麗なのだなといつも気付かされる。
3日目
日曜の朝食。バゲットに大葉と梅しらすマヨネーズ。
去年、マヨなしポテトサラダの開発にあけくれて以来マヨネーズからは遠ざかっていたので本当に久しぶり。とはいえ、やはりベッタリ使うとしらすの風味を殺しそうなので、塩気は梅干しに任せて控えめに。
昼食では、そろそろしらすの風味を最大限に引き出したくなり、簡易版の香味油を作ることにしました。
実は最近、真空調理、低温調理に関して非常に詳細な科学的考察をされているNickさんに教わって煮干しの香味油を作ったのだけどこれがものすごく美味しくて、自作ラーメンにも欠かせない存在になっているのです。
Nicksさん(@fish_and_Nicks)に教えていただいた煮干しの香味オイル。初めてなので加減を見つつ、とりあえず100℃で30分からやってみる。 pic.twitter.com/HndYUH9Dsg
— kazh (@kazhomely) 2018年4月22日
去年からずっと作っているアリタコージ氏の謎油しかり、魚介の旨味がオリーブオイルにのることはよくわかったので、しらすも低温でじっくり味を引き出してみることにしました。
しかし、しらすは油に投入するとめちゃくちゃに跳ねます。それはもうポップコーンかよというくらい跳ねます。気がついたら全匹逃亡してフライパンが空っぽという事態にもなりかねない。なので水分が飛んで落ち着くまでアルミホイルを簡易蓋にするのがおすすめ。
パンパン跳ねてホイルが躍動する様がますますポップコーンっぽい。焦がさないようトロ火で20分。本当はもっともっとじっくりやりたかったのだけど、お昼が近かったので泣く泣く切り上げ、トマトを投入。
さらに15分。
あとは茹で上がったパスタの茹で汁を加えて乳化させ、仕上げる。
しらすオイルで作るアーリオオーリオ。カリカリに揚がったしらすと釜揚げしらすのツートップに原型を失ったトマトの奏でる3重奏。もちろん煮干しや昆布ほど強烈な旨味が出るわけではないけど、味はふくよかで深い。
この日はわけあって急に外出することになったので夕飯は作れず。それでも週末の締めくくりにどうしてもしらすを食べたくて、深夜に究極のしらす料理を作ることに。
その名も「しらす胡麻ごはん」。
たぶん(記憶にある限り)、僕が初めて考案し、初めてレシピ化した料理。
思いついたのは恐らく小学校に上がったばかりの頃。こんなものでも当時は世紀の発明のような気がしたものです。親に食べさせたら美味しいというので調子に乗り、学校でも広めて回り、作り方が地域ニュースに掲載されたりもしました。
この経験がなければ、その後、料理に興味を持つこともなかったろうし、そうなれば家庭科の授業に熱心に取り組むことなく、バイト先に外食産業を選ぶこともなく、包丁仕事を好きになることもなく、貧乏を自炊で乗り切ることもなく、家庭内で休日の料理担当を願い出ることもなく、Twitterに料理写真を投稿することもなく、つまり、こうしてしらすを送っていただけるようなこともなかったはず。
そういう意味で、僕にとってしらす胡麻ごはんは人生を変えた究極のしらす料理なのです。
ちなみにkazh少年による秘伝の作り方は下記の通り。
しらす胡麻ごはんの作り方
◆材料(1人分)
- ご飯・・・1膳
- しらす干し・・・1つかみ
- 白胡麻・・・適量
- 黒胡麻・・・適量
◆作り方
- ご飯をお椀に盛り、しらす干しをのせる
- 白胡麻を振りかける
- 黒胡麻を振りかける
- 混ぜながら食べる
これだけ。
どこにでもある感じだけど、2種類の胡麻を使うことで不思議としらすの風味が立つ気がするのは自分贔屓かな。考案した頃の記憶を辿ってみても、白胡麻と黒胡麻を必ず両方かけること、混ぜながら食べることには異様なこだわりがあったので、できればそこだけ守ってください。
4日目
最終日は月曜だったので日中の料理は無し(妻にはお弁当に持っていってもらった)。遅く帰った夕飯で最後のしらすをいただくことに。
前日のしらすオイルが気に入ったので再度じっくりと味を引き出し、揚げ上がったしらすも使って贅沢な梅しらす混ぜそばにしました。
出汁に豚や鶏は使わず、干し貝柱としらすオイルのみ。麺は市販のつけ麺用太麺。しめじは時雨煮にして、茹でた小松菜を添える。前日の外出のついでに買った実山椒がピリッと効いて非常に美味かった。
そんなこんなで雑多なまとめでしたが、まる3日間に渡るしらす祭りもこれで目出度くお開き。こんなにたくさんのしらすを食べたことはないし、こんなにいいしらすを食べたこともなかった。本当にありがとう、おチヨさん!ごちそうさまでした。