前回、レモンマーマレードづくりを派手に失敗した話を書きました。
いろいろと考えた結果、いつもより多めにつくるのに苦みを怖れてペクチン液を弱めにしてしまったことが原因と結論付けました。なので、もう一度初心に返って、最初から丁寧にやり直したわけです。
以下、その記録。
まず、フォロワーさんにいただいた「先に皮を剥いておく」という時短アイデアを実践。両端を落として、上下1周ずつ樽形に皮を剥く。
一気にワタを取る。1枚の皮が長いので、これがとても楽。
檸檬10個で1時間。かなりの時短。
刻む労力はあまり変わらないけど、前工程が早く済んでいる分、集中力が残っているので効率的に終わった。
いつも通り3回茹でこぼしてジャム用ピール完成。
肝心なのはここから。今回のテーマは苦みを怖れずしっかりペクチン液をつくること。なので茹でこぼす際も余計な沸騰時間をつくらないよう気をつけた。
さらに、ペクチンが弱かった時のために皮や中ワタを少し残しておいた。万全。
リベンジペクチン。
材料の合計が1,602g、よって砂糖は961g。
丁寧に煮る。
消毒、脱気。
で、冷蔵庫へ。
今回はかなりヌルヌルが強かったので、これで大丈夫!と思って安心して寝たわけです。ところがですよ。
なんと、全然固まってない。DQ11の主人公の髪のようにサラサラ。
これには参りました。レモンマーマレードは僕の数少ない自慢とも言えるものだっただけに、さすがに2回連続で失敗するとは思っていなかった。しかもペクチンもかなり苦めの濃いのを取ったのに。
全てのジャム瓶を開けて鍋に戻し、じっと考えました。
加熱時間は沸騰後の時間で量っているので材料の量には関わらないはず。
ペクチンの濃さも十分だった。
それでも固まらないのは何故だ。
そして、あることに気がつきました。
沸騰して鍋から出る蒸気。
材料が増えれば水分量がそれだけ増える。それに対して鍋の直径は変わらない、コンロの与える熱量も変わらない。つまり、加熱時間あたりの気化量は変わらない‥‥?
ということは当然、結果的に全体に対する仕上がりの水分比が変わってしまう。それが固まらなかった真の原因なのではないかと。
でも加熱時間を変えれば全体の風味も大きく変わってしまうわけで、つまり、同じ鍋、同じコンロを使っている限り材料の量を変えて同じジャムを作るのは実質的に不可能だということになる。
ツイートした時点では鍋の口径が気化量に影響しているのでは、と思っていましたが、沸騰した水の気化量に影響するのは熱量で表面積は関わりません。
体積が増えているのに対して鍋の開口部の直径は同じ。つまり同じ加熱時間に対して水分蒸発量の割合が少なくなったことが原因かもしれない。ということで、瓶を全部開けて5分間再加熱して水分を飛ばしてみている。 pic.twitter.com/yvn5MqyTyg
— kazh (@kazhomely) 2018年2月26日
ただ、コンロの火の熱がどれだけ伝わるかという点に於いては、鍋の口径が影響するはずです。どなたか詳しい方がいたらコメントください。
なるほど、つまり、2倍の量のマーマレードを作りたかったら少なくとも最後に煮る時は2回に分けないといけなかったということか。
え‥‥じゃあ、他の料理は?
そこに考えが至った時、背筋がゾクッとしました。
そう、例えば、得意料理だと思っていたのにお客様が来ていつもより多めに作ったらあまり美味しくない気がしたり、4人前で表記されていることが多い世間のレシピを半量で作ったらなんだかしっくりこなかったり。
これまで、気のせい、或いは慣れない量を作ることで手際が悪かったのだと思い込んでいた全ての変化は、加熱と水分の問題だったということかもしれません。
自然のペクチンで作るマーマレードは、そこの許容範囲が極端に狭いので現象として露呈したのでしょう。
実に当たり前のことなのに、ずっと深く考えずにいたことが途端に恥ずかしくなりました。だからカレールウの箱に書いてある材料も、ルー1/2でも水は半量でないのですね。
でも、材料の量を変えたら加熱時間と水分量を同じにすることは不可能。全量を一気に作る時と、半量を作る時では原理的に仕上がりは別物。
つまり、レシピの分量は絶対に変えちゃいけません。
それが今回の知見。