前回記事を公開した後で、改元について全然触れていなかったことに気がついた。
元々GW前に公開しようとしていた記事だったのでその辺何も考えていなかったのだけど、令和という名前は結構好きだし、めでたい雰囲気で改元を迎えられることがあるとは想像もしていなかったので個人的にはわりと楽しんでいる。
令和も良い時代になりますように。
さて、草花の同定を試みるようになって1年が過ぎた。去年、記事にしたのがこの2回。
別に花は春の専売特許というわけでもないので秋冬の間も道すがら観察は続けていたものの、なんとなく気持ちが枯れ気味で記事を書くほどには研究熱が上がらず。飽きっぽい自分のことなので、少し冷めてきたのかなと思っていた。
ところが、気温が上がって道端の草花が芽吹いてきた頃からまた同定欲がムクムクと‥‥誰に言われたわけでもないのに草花に目が行って、あちこち出かけるようになるのだから不思議なもので。僕は前世が落葉樹だったんだろうか。
そんなこんなで段々と活動を再開したので、その記録をまとめました。
2月の終わり頃、家の近くの梅園へ。まだ肌寒かったけど、ポツポツ咲き始めていて春の訪れを感じた。
どこにでも咲いているようで全然見識のない花も見つけた。オランダミミナグサ。花弁の先がちょっと割れているのが可愛い小さな花。
きっとハコベの仲間だろうと思って調べたら当たっていた(同じナデシコ科だった)ので、些か嬉しくなった。
3月に入って昔住んでいた荒川区を訪れる機会があり、せっかくなので荒川自然公園へ。
ここは三河島水再生センターという下水処理場の上にある公園。処理場の歴史は古く、着工が大正3年、竣工及び稼働開始が大正11年。国の重要文化財にもなっている。
昭和49年に処理場上の人工地盤に公園が造成された。信号機が設置された交通園というのがあったりしてなかなか面白い。
春は桜の名所だというけど、まだ早かった。この時はユキヤナギが三分咲き。
こっちはベニバナユキヤナギ(フジノピンク)という品種らしい。
都電に乗って、懐かしい街をのんびり楽しんで帰った。
家の近所に咲いていたネギ亜科ハナニラ属ハナニラ。別名、ベツレヘムの星。
花を食べる通称ハナニラとは違い、この学名ハナニラは有毒。
アンズの花。梅、桜、桃、どれでもないと思ったら杏。
コハコベ。ミミナグサと同じ5弁花だけど、切れ込みが深すぎて10弁に見える。
カタバミ。ひらひらと優雅。
ヒメツルソバ。去年覚えた花だけど、一度見つけると秋になるまでずっと咲いているのですっかり見慣れてしまった。
トキワハゼ。種が爆ぜるところはまだ見られていない。
街路樹のコブシ。花の形状も葉がない状態で咲くのもモクレンによく似ているけど、花の裏側にちっちゃい葉っぱが出ているのが特徴。
満開のユキヤナギ。まさに雪の柳。
3月下旬、この春はじめての荒川散策。まだまだ空気が冷たくて草花もまばらだった。
去年テントウムシと戯れた川縁の茂みも枯れた葦が倒れているばかり。
さすがにこれでは‥‥と思ったけど、諦めずに歩き回っていたらそれっぽい茂みを発見。
そっとかき分けてみると、おお、やった。
棒に移して遊ぶ。
ちなみに、それっぽい茂みの正体はカラスノエンドウ。
改めて調べたら、カラスノエンドウはアブラムシの付きやすい草だったので、ちゃんと理にかなっていた。すごいじゃん、自分。図鑑を読んだり歩き回って観察していたのは意外と無駄ではなかったみたい。
ちなみにこの日はオオイヌノフグリがそれはもう咲き乱れていたけれど、僕の好きなこの手の小花たちはどんなに群生しても花の大きさに対して相対的に間隔が広いので、咲き乱れっぷりは写真には写らないのが残念。
肉眼ではこういう花がそこら中、絨毯のように咲いて見えるのですけどね。
他にも春の七草のひとつ、ナズナの花を見つけた。いわゆるペンペン草。
こちらはホトケノザ。でもこれは春の七草の仏の座ではない(七草はコオニタビラコ)。ハナニラといい、難しいね。
それから数日後、家の近所でようやくサクラサク。
時期的にすごく遅いというわけではないけれど、今年は都心部との時間差がかなりあって、ニュースでは「もう見頃」とか言われていたので結構やきもきしていた。
その週末、近所の知人家族とお花見ということになったのだけど、朝が余りにも寒かったので一旦屋内でピクニックすることに。平成最後の春は本当に寒かった。
お土産に持っていったイチゴのホワイトチョコレートがけ。
湯煎で溶かしたノベルビアンコをイチゴにつけて、ドライフレーズを振って冷やしただけだけど、見栄えは良い。
午後からは晴れて気温も上がり、お花見本来の目的も達成できました。良かった。
そういえば、園芸品種であるソメイヨシノの名前の由来になっている染井村って現在の豊島区駒込あたりにあったことを今さら知った。来年行ってみよう。
アセビ。公園によく植えられているけど、花のない時期はただの茂みにしか見えない。
4月に入ってようやく少し暖かくなり、近所のモモが花盛り。
今度はTwitterの方々とのお花見で祖師谷公園へ。
この日は生ハムを食べようパーティということで、主催の方が最高の生ハムをたくさん用意してくれてそれはもう最高でした。はい。
公園で新鮮なヒラマサを捌く人。
手作りの大福を初めて食べた。あまりに美味しかったので2つ食べたのは内緒。
今年の桜は足がはやいと言われていたけど、途中途中冷えたせいか、ふたを開けてみたらずいぶん長く楽しめたなぁ。川に枝垂れる満開の桜は本当に綺麗。
それからしばらくして、近所のドウダンツツジが満開に。
ドウダンツツジは住宅の生け垣として使われる植物の一つですが、季節感があってとても好き。春になると一斉に花がついて、秋になると今度は真っ赤に紅葉する。
さて、もうすぐGWという4月中旬。今度は古い友人に誘われて、山梨にある一棟貸しの宿へ一泊二日の小旅行に行きました。
宿だけでも素敵な場所だったんですが、もちろん僕は散歩する気まんまん。
眼に入ったのは、一本の幹から紅白に咲き分かれた見事なハナモモ。
源平しだれ桃という品種で、こういう咲き方を、源氏の白旗、平氏の赤旗になぞらえて源平咲きというらしい。
赤い色素を作る遺伝子が発現した細胞としていない細胞が共存したキメラ状態の枝から挿し木で育てると、どちらの細胞が分裂したかによって咲き分かれていくのだとか。理屈はわかっても、目の前で見ると本当に不思議。
ハハコグサ。都内でも見かける春の七草の御形(ごぎょう)。
小さなバッタとさらに小さなアブラムシ。
クサノオウ。アルカロイド系の強い有毒物質を持つ毒草。
かつては医者が旅をしてまで探すほどの薬草として扱われていて、その効きめは中国の本草書、欧州の薬草書でも紹介されていたらしい。やっぱり毒と薬は紙一重。
ムスカリ。近づくとムスクのような香りがするらしいけど確認できなかった。
コスミレ、だと思う。スミレ、ヒメスミレ、ノジスミレなどスミレの仲間はどれもよく似ていてまだ「これだ」と自信を持って同定できない。端っこにキュウリグサが友情出演。
普段、都会の草花は「ほらほら見つけちゃうぞー!」というテンションで探しているのだけど、自然豊かな地域では人間の方がアウェイというか、草花に地元感があって「あ、撮らせていただきます。お騒がせしてすみません」という感じ。
宿では文字通りのご馳走(走り回って準備したおもてなし)をたくさんいただきました。
つくし甘煮の卵綴じ、蕗味噌、こごみのマヨネーズ和え、わらびポン酢、せりの胡麻和え、うどのきんぴら、 大根とクレソンと揚げ蕎麦のサラダ、 あまごの干物、ふかし芋、地元野菜と厚揚げと鹿の味噌漬けの炉端焼き、山菜(いたどり、タラの芽、うるい、よもぎ、こごみ)の天麩羅、きびご飯と葱味噌、手打ち蕎麦。
山の幸がてんこ盛りでお腹がはちきれるかと思った。
朝ごはんも美味しかったなぁ。
こんなにのんびり過ごしたのはいつぶりだったろう。誘ってくれた友人に感謝。
さて、家に戻ると近所の草むらにベニシジミが飛び交っていた。
こちらは言わずと知れた春の代表選手モンシロチョウ、ではなく、モンキチョウの白型メス。モンキチョウのメスには黄色いのと白いのがいる。
ノゲシ。タンポポによく似た花を付けるキク科の植物にはブタナ、オオジシバリ、コウゾリナとかそれっぽいのがいっぱいあっていつも迷う。
プリムラ・マコライデス。サクラソウの仲間。ファンシーな名前からヨーロッパの花かと思いきや、原産は中国雲南省。
繁殖力が強いということで、一部の自治体が注意勧告を出したりして最近話題のアイツ、ナガミヒナゲシ。
アレロパシー活性によって周囲の植物を枯らすなどと云われていますが、観察している限り、他の植物を駆逐するほどの強い性質を有しているようには見えません(確かに繁殖力は強いけど、ナガミヒナゲシの大群が咲いた跡に他の花が咲いたりもしている)。気になる方はぐにさんによる農業環境技術研究所の藤井義晴先生とのやりとりを読まれると良いと思います。
ナガミヒナゲシについて補足。藤井先生ご自身が書かれた農環研ニュースNo.90によればアレロパシー活性を評価項目に含む改良FAO方式雑草リスク評価法(同24集)で評価
したところ、特定外来生物に指定されている植物に匹敵するか、むしろこれらを上回る高いリスク点数が得られ
た、という話。これを読む限り、アレロパシー活性を含む複数の要因によって雑草化しやすいというだけのように思える(雑草リスク評価法とは『日本で雑草化する植物とそうでない植物を判別する手法』のこと)。アレロパシー活性が異常に高いわけでも、特定外来生物のように在来種に対する危険があると言っているわけでもない。
アレロパシー活性でいえばユキヤナギやスズランなどが非常に高い活性を持っていることが知られているし、海外原産で野草化、雑草化した植物なんて星の数ほどある。
気になるのは情報に振り回されているのではないかとも思える自治体の対応だ。つくば市などは「ナガミヒナゲシにご注意を!」と題したページで環境省の要注意外来生物リスト(今は廃止されて生態系被害防止外来種リストになっている)にリンクを張っているが、実はナガミヒナゲシはそのリストの中に名前がない。無知なのか印象操作なのか意図不明である。一方、日光市のページ「外来生物「ナガミヒナゲシ」について」は農環研の研究発表とも合致しているし、冷静で好感が持てる。
もちろん、これから強い有害性が確認されてなんらかの対策が取られる可能性もあるかもしれない。しかし現時点ではただの雑草だ。藤井先生のくれぐれも、危険意識を煽ることがないようにお願いいたします。
という言葉が全てではないだろうか。
穀雨に濡れた白ツツジ。色っぽい。
ローズゼラニウムことニオイテンジクアオイ。切れ込みの深い葉が特徴的。
連休初日は池袋の公園へ。
ベニバナトキワマンサク。駅近くでひっそり咲いていた。
シロヤマブキの実。
お花屋さんに紫陽花が並ぶ。
連休の間は遠出せずのんびり過ごすと決めたので、久しぶりに木登りなどした。
オオアラセイトウの花畑。別名、ムラサキハナナ。
その花畑の片隅に咲くアメリカフウロ。
ツタバウンラン。海の近くに咲くウンラン(海蘭)に花が似ていて葉が蔦っぽいのでツタバウンラン。
コデマリ。スズカケともいうバラ科の低木。
サクランボ。家木でもなるんだなぁ。美味しそう。
ヒメヒオウギ。たまに見かけるけどイキシアの仲間かなぁくらいに思っていたら、写真を見たTwitterの親切な方が教えてくれました。
ヒオウギズイセンとヒメトウショウブを交配させた園芸品種らしいので、これもどこかの庭から逃げ出して野生化したのかな。
言わずと知れたシロツメクサ。
フワフワした花がガラス工芸品を輸入する際の詰め物(緩衝材)として使われていたからツメクサ、って前に書きましたっけ。面白いですよね。よく四つ葉が群生している場所があると聞くけど、この目で見たことはないです。
ちなみにシロツメクサも『繁殖力の強いアレロパシー活性を持った帰化植物』なんだけど、誰も問題にはしないのが不思議。
植物園のシラフジ。花は終わりかけていたけど、とても綺麗。樹高が低かったのでカメラを潜り込ませて撮りました。
シラフジの葉に付いていたクロウリハムシ。ウリ科の植物を食べる害虫として扱われているけど、マンガみたいに愛嬌があって憎めない姿。
ヤマブキソウ。サクラソウと同じノリのネーミングで、バラ科のヤマブキとは全然違うケシ科の草。
オオアマナ。真っ白な花弁に見えるけど裏側はグリーンなんだそうで。めくってみれば良かったな。
オオバギボウシ。花はまだだけど、若葉の幾何学的な伸び方が美しくて。早い時期の芽はウルイとして食用されている。
ホタルカズラ。白い稜が特徴的なコバルトブルーの花。
シャガ。三倍体で種子は出来ないので、群生していたとしても人為的に植えられたものが根茎で広がっているだけなのだそう。
ノイバラ。いわゆる野薔薇。
ただ、果実がローズヒップになる野薔薇はハマナスのことでこれではない。でも、そもそも中国語の『薔薇』の意味がバラじゃなくてハマナスのことだというから複雑。
連休の終盤、今年二度目の荒川へ。前回とは違い、すっかり草も生い茂っていい感じ。
ムラサキツメクサが花盛り。よく見ると左上にナナホシテントウが。
ヤセウツボ。河川敷でよく巨大な赤いアスパラみたいになっているアレ。
ヘビイチゴ。ちょうど時期が良くて、花と実の生育過程を一度に見られた。
連休明け翌週、今度は長野へ日帰り旅行。
しなの鉄道にある三歳児の聖域、三才駅。
なんかもう歩いてるだけで最高です。
最高の踏切。
バイカウツギ、かな。葉がデコボコでギザギザしていた。
菜の花(アブラナ)畑。
古い消火栓を囲むライラック。
帰りに善光寺にも立ち寄れて、充実した旅になりました。
綺麗な顔の地蔵菩薩。
お寺近くの垣根に咲いていたスズラン。なんとなくありがたい。
そんなこんなで盛りだくさんだった今年の春。
数えてみれば50種以上、我ながらよくもまあ撮ったものだと思う。まとめようまとめようと思いながら次々写真が増えるので、つもり積もってずいぶんな長編になってしまった。
知識がないからこその発見、楽しみというものがあるから、このままの勢いで何年も続けていけるかはわからないけれど、その時にはまたきっと違う楽しみ方が生まれているのだろうと思う。
僕にとっては、食と結びついた時がゴールであり始まりになるのかな。それもまた楽しみだ。